元TBSプロデューサーが、TV業界に生きる人たちをリアルに描いた青春お仕事小説、ここに誕生! !
25歳の駆け出しAP美南、剛腕プロデューサー上米、超絶人気アイドル島P、若き成功者フジエモン。
「これってもしや……」なキャラクターが勢ぞろい。
【以下、エピソード2より】
上米は目をぐばっと開けると、突然怒り出した。
「あなた、何言ってるんですか? 僕らをバカにしてるんですか」
それを聞いて、森沢は目を丸くした。
上米は続けた。
「僕らは森沢洋子に全部まるまる歌ってもらいたくて、番組に出て欲しいと今日お願いに来てるんですよ。
そこら辺の安いテレビ局の安直なテレビマンと一緒にしないでください。
あの長い長い、だからこその名曲『ひまわりのまわりで』を13分まるまるフル尺で、僕らの番組でぜひどどーんと歌ってください! 」
森沢は心底びっくりして、そして感動しているように美南には見えた。
長年歌手活動をしていて、あの長い名曲全部を「フルコーラス歌ってください!」ってテレビマンにお願いされたのは、多分初めてだったんじゃないだろうか。
そして、上米は続ける。
「でも森沢さんみたいな素晴らしい方に出演してもらって、僕らは恥ずかしい視聴率を取るわけにはいかない。なので、森沢さんがまだテレビでは話していない、あの恋人のエピソードを今回話していただけませんか」
森沢が人気絶頂の頃、不倫スキャンダルとしてかなり巷で話題になった、悲しいエピソードがある。
テレビで森沢がその話を語ったことは一回もない。